
人それぞれが人生の主人公
音楽を始めたきっかけを教えてください。
もともと音楽は聴く専門だったのですが、中学生のときに友人から「一緒にバンドをやらないか」と誘われ、初めてベースを手にしました。
正直、最初はさほど高揚感もなく、「あまり目立ちたくない自分には合っているかな」くらいの感覚でした。
当時やっていたのは、それまで聴いたことのないようなヴィジュアル系バンドで、ある意味カルチャーショックでした。
初めて弾いた曲はLUNA SEAさんの「WISH」。また、T-BOLANさんも大好きで、CDは全部持っていました。
影響を受けたアーティストや作品にはどんなものがありますか?
元々、アニメソングが好きで聴き専だったんですが、上記のようなキッカケで活動を続けていく上で出会った、直に交流のあるアーティストの影響を強く受けていると思います。
特に佐世保で活動されているザ ベーゴマの宗田周士さんは師と仰いでおり、楽曲のコードワークなどはかなり似ているような気がします。
あなたの音楽をひとことで表すとしたら?
5分で読める短編小説ですかね。必ず誰か主人公がいて、その人の背景を歌いたいと思っています。

楽曲制作では、どんなことを大切にしていますか?
感覚が一番で、一番大事なフレーズが歌詞と一緒にメロディとして浮かび、そこから広がっていく感じです。
最近リリースした「レスポール」も「だから、なぁ、聴かせてくれよ。お前のクソダサいブルースを」という一節から生まれました。
アレンジ面では、いい意味で自分の意見があまりないので、他の人の趣向が入り込むのが楽しいです。
これまでの作品の中で、特に思い入れのある1曲とその理由を教えてください。
「レスポール」です。
15年ほど地元で活動していたギタリストKyoの愛器がタイトルになっています。
上京して8年目、2年前に地元でライブをすることになり、不意に相方の歌を作りたくなり、この曲のサビができました。
ライブ当日、アンコールで相方に「Amペンタでついてきて」と即興で演奏し、その場で1番は相方のこと、2番は東京で支えてくれた仲間のことを歌いました。
今回のアルバムをプロデュースしてくれた藤井潤さんと、レコーディングについて話している中で、僕が強くKyoのギターを入れたいと言っていたところで、遠隔レコーディングがネックになり「もう、二人で佐世保までレコーディングしに行くか」という話にもなりましたが、地元で僕のレコーディングをしてくれていた、RIA2RecordsのJKくんが助けてくれた上にピアノでも参加してくれたので、
結果的に、自分の歩みのすべてが詰まった曲になりました。
ライブでは、どんな空気や時間を作りたいと考えていますか?
お客さんにも参加してほしいです。
イントロや間奏で投げられるヤジもありがたく拾っています。
「よ!モジャモジャ」など、ありがたいですし、「カシスオレンジ」という曲では、実際にカシスオレンジを買ってきて差し入れしてくれた方もいました。

今後挑戦してみたい音楽的なアプローチやコラボはありますか?
一時期、楽曲提供もしていましたが、人に自分の歌を歌ってもらうのは面白いです。
朗読劇的なものと組み合わせるのもやってみたいです。
普段はどんな1日を過ごしていますか?ルーティンがあれば教えてください。
仕事が中心の1日ですが、音楽も欠かさず取り入れています。移動中には告知活動やSNS更新を行い、1日10分でもギターに触れる時間を作るようにしています。
平日・休日問わず、生活の中に自然に音楽を組み込みつつ、日常のリズムを大切にしています。

音楽と日常のバランスはどう取っていますか?
特に意識していません。オンオフは特になくて共存している感じですかね。
音楽と仕事がリンクすることも多く、SNS運用の考え方などは両方に通じていると思います。
創作のヒントやインスピレーションはどんな場面で湧いてきますか?
「人」です。出会いや別れ、その人の生き方などに感銘を受けると、曲に反映されやすいです。
人それぞれが人生の主人公で、どんなに泥臭くてもドラマがあると思います。
好きな場所、よく行く街やカフェなど
新撰組ゆかりの地を巡るのが好きです。
土方歳三記念館で和泉守兼定の刀身を見るために、雨の中2時間待ったこともあります。
大国魂神社、櫻田神社、板橋の慰霊碑などもよく訪れます。
音楽以外で影響を受けているものは?
アニメや漫画が好きで、特に浅野いにお先生の作品は影響を受けています。
また、先述の通り、新撰組が好きで、不器用な人間像や栄華と衰退、仲間との別れなどのドラマに惹かれます。
文学的には万葉集や古今和歌集のような和歌や短歌は読み解くまでが楽しいですし、インスピレーションをもらっているかなと思います。
「大人になってからの音楽の楽しみ方」について
自分の生活や経験が、そのまま曲に反映される楽しみがあります。
若い頃よりも音楽との距離感を自由に取れるようになりました。

日常の中で、音楽に救われた/支えられたと感じた瞬間はありますか?
音楽をやるために上京してきたのですが、孤独感がやはりあったので活動してきた中でできた仲間には、とても支えられていると感じています。
音楽だけでは無いところでも、とても支えられているなと思います。
SOULFUL DAYSの読者に向けて、あなたらしい言葉でメッセージを
誰かの物語を歌うことで、自分の人生も少し豊かになる気がします。
音楽でも日常でも、あなたの物語が誰かの心に響くことを願っています。

長崎県佐世保市出身。ギター1本で物語を語るように歌うシンガーソングライター。
地元で音楽活動を始めたのは高校生の頃。ブルースギターを愛する相方と共に結成したロックユニット「andCRY」では、約10年間、地元を中心にライブ活動を重ねた。打ち込みを使った初期のポップロックから、生演奏にこだわった後期のスタイルへと進化を遂げ、長崎の音楽シーンで確かな存在感を築いた。
2018年、メジャーを目指して東京へ拠点を移すが、その矢先に新型コロナウイルスの流行に直面。活動が制限されるなかでも、自身の音楽への想いを形にしようと曲を作り続け、代表曲のひとつ『レスポール』が生まれる。過去の仲間や地元への想い、ブルースギターへの愛着を綴ったこの曲は、今のくろいわの音楽スタイルを象徴する一曲でもある。
彼の歌は、“5分で聴ける短編小説”。一つひとつの言葉が丁寧に紡がれ、過去の恋、すれ違い、再会、街の風景や誰かの記憶を、そっとなぞるように描く。代表曲『滲んだ三日月』『カシスオレンジ』『愛しき人よ』などは、どれも聴く人の心の奥に眠る記憶を呼び起こすような、静かな余韻を残す。
レコーディングでは丁寧に音を整え、聴きやすくまとめあげる一方、ライブでは表現の幅が一変する。
ささやくようなウィスパーボイスから、心をえぐるようなシャウトまで——まるで演劇のように情感を込めて歌い上げるそのステージは、観客との会話や呼吸も含めて“その日限りの物語”になる。
「音楽を聴く、というより“出会う”ものにしたい」
そう語るくろいわ いさを。の音楽は、誰か一人の心に深く寄り添い、静かに灯るあたたかさを持っている。
楽曲リンク
・新しくリリースするアルバム
「西からくる風は、あなたの匂いがした」
https://linkco.re/N1XY7x6m
・以前お世話になったミニアルバム